ドクターから一言

第34回「一過性脳虚血発作」

今年も暑い夏がやってきました。
この時期は発汗も多くどうしても血液が濃くなりがちです。
この時期に注意が必要なのが脳梗塞、心筋梗塞です。
これらの病気は冬だけでなく夏も多く発症します。

さて、今回は脳梗塞の前ぶれと考えられる一過性脳虚血発作についてです。
これは脳の血管が一時的につまって起こり、つまった場所により症状は異なりますが、めまい、視野障害、半身のマヒやしびれ、ロレツ障害、動作がぎこちなくなる等が突発し、通常は数分~数十分で血栓が自然に溶けて症状も回復します。
このため何かおかしいと感じても回復するため、疲れのためかと考えつい放置しがちですが、本格的な脳梗塞の前兆である場合があり発作を自覚したらすぐ病院を受診することが必要です。

一過性脳虚血発作は動脈硬化や不整脈、糖尿病、高血圧、高脂血症、喫煙者などでリスクが高まるため、日常生活では、禁煙、肥満の解消、脱水予防のため心がけて水分をとる等の注意が必要です。
もちろん基礎疾患の治療は徹底するとともに、拡血小板薬や抗凝固薬による血栓予防治療も必要です。

脳梗塞は重い後遺症が残ると寝たきりになる場合があり、一過性脳虚血発作を見逃さないよう皆さん十分お気をつけください。

第33回「心肺蘇生について」

東北、東日本を巨大地震が襲い甚大な人的被害を及ぼしました。胸が痛むばかりです。
このような大災害のみならず日常生活でもあなたの家庭・友達・同僚・あるいは見知らぬ人でも、目の前で突然倒れて意識も呼吸もない際、あなたはどうしますか?
倒れてからすぐの迅速な救命処置が生命のみならずその方の社会復帰にも繋がります。

その手順ですが、

1、まず倒れている人の意識、呼吸の有無を確認します。
2、意識、呼吸がなければ直ちに周囲の人に心肺停止状態であることを告げ協力を要請します。
  その時、協力者が多ければ多いほど成功率は上がります。
3、協力者に119番通報とAEDの取り寄せを頼みます。
4、両乳首の間の胸の平らな骨(胸骨)に両手を重ねて置き強く速く押しつけます。
  目安として1分間に100回以上、胸が5cm以上へこむ様に続けます。
  実際にするとよく分かりますが、心臓マッサージは重労働で2分もやればかなり疲れます。
  なのでできるだけ多くの人に順番にしてもらう必要があります。
  途切れない様に続けてください。
5、AEDが届いたらAEDの指示に従って電極パッドをつけ作動します。
  一度で蘇生に成功しなければ同じ手順をくり返します。

心臓マッサージの際30回マッサージに2回人工呼吸が標準とされてきましたが、最近では人工呼吸が必ずしも必須ではないという結果も出ています。
とにかく大事なことは救急車が来るまで心臓マッサージを途切れず続けるということです。
できれば実際に講習会などで体験しておくと良いでしょう。

第32回「コレステロールは高い方がいいの?」

最近コレステロール値に対する議論がにわかに高まっています。
即ちコレステロールが低い人の死亡率が上がったという栄養学者らの作る脂質栄養学会の発表です。一方医学会はこれに反発しています。

そもそもコレステロールは8割が肝臓で作られ、2割は食品由来で細胞膜や神経細胞、ホルモン、胆汁の元になる重要なものです。
このうちLDLは血管壁にたまって動脈硬化を起こす悪玉、HDLは血管から余分なコレステロールを運ぶ善玉です。
現在まで様々の国内外の研究からLDLが高くなると動脈硬化が進み心臓死の発生率が上がるのは明らかです。

では、なぜこのように相反する結果が出たのでしょうか。
一つはコレステロールは肝臓で作られるので肝臓病の人は当然低くなります。
脂質栄養学会の発表の中には肝臓病の方も含まれたためコレステロールの低い人の死亡率が高かったという結果が出た様です。
実際肝臓病の方を除くとコレステロール値が低い人の死亡率が高いという現象は認められません。
実際WHOの調査でも感染症、低栄養の死亡率は半分になり、癌、動脈硬化性疾患の死亡率が格段に高くなっています。
但し、高LDLにも他の危険因子、例えば心臓病、喫煙、糖尿病、高血圧、年齢、低LDLの有無により4段階に分かれて治療レベルが決まっており一律ではありません。
ご自身のLDLレベルと危険因子の有無をぜひチェックしてみてください。
なお、総コレステロール値は現在は参考程度にしか考慮しませんのでご注意ください。

第31回「高血圧の新しい治療方針」

2009年より高血圧治療のガイドラインが変更になりました。
具体的にはより厳格な降圧目標、家庭血圧の重視、必要にに応じて積極的な多剤併用の推奨、正常高値でも持病により積極的な治療などが新しい点です。
降圧目標は診察室では若~中年者は130/85未満、高齢者は140/90未満、糖尿病、慢性腎臓病、心筋梗塞症は130/80未満、脳血管疾患は140/80未満。

一方家庭血圧目標値はそれぞれ125/80未満、135/85未満、125/70未満、135/85未満と定められました。
また診察室血圧が130~139/85~89の正常高値血圧の方も糖尿病、慢性腎臓病、臓器障害、心血管病のある方は高リスクと考えられ積極的に正常血圧レベルまで下げることが必要とされました。
糖尿病などがなくても正常高値でメタボリック症候群のある方は中等リスクと考え、生活習慣の改善で効果がない場合は治療の必要があるとされています。

単剤で治療が不十分な場合は増量または多剤併用療法で目標値まで下げることが求められています。
また少量の利尿剤は副作用の頻度が少なく、他剤との相乗効果により有効な場合が多く積極的に併用することを強調されています。
また降圧目標に家庭血圧も明記されており、高血圧または予備軍の方は家庭血圧チェックが必要です。
主治医と相談し的確な血圧レベルを維持してください。

第30回「インフルエンザと異常行動について」

今年もインフルエンザの季節が来ました。
インフルエンザ、特に子どもさんの治療法方について心配しておられる方も多いと思います。
抗インフルエンザ薬のタミフルが異常行動との関連の疑いから十代には原則禁忌となりました。
10歳で線引きされた理由は、それ以上になると体も大きく異常行動が起きた時に親が止められない恐れがあるとの事でした。
同時に9歳以下はインフルエンザで死亡する危険性を考慮して禁忌から外したとの事です。

現時点では異常行動とタミフルの因果関係は不明で、インフルエンザには神経症状を伴うことも多いことから異常行動はインフルエンザ脳症によるものと考え方も有力です。
つまりインフルエンザに罹るとタミフルの服用に関わらず異常行動が出現する可能性があり、最低2日間は一人にせず親の監視が必要ということです。

異常行動とは突飛な言動、うわ言、興奮、けいれん、妄想、幻覚、意識障害で、いつもと様子が違えば直ちに受診する必要があります。
タミフルと同効果の吸引薬にリレンザがあり、こちらは今のところ十代にも使用可となっていますが、異常行動の報告が皆無ではありません。
これらを使わずアセトアミノフェンや麻黄湯等の解熱作用のある薬で回復を待つという方法もありますが、やはり脳症の発現には十分な注意が必要です。

やはり予防が第一で、小児・高齢者のみならず、20歳以下の方はできるだけ早期のワクチン接種が重要かと思われます。

第29回「在宅療養支援診療所の役割」

2008年から医療保険制度が激変し、後期高齢者医療制度が開始され、医療現場のみならず患者様も大変混乱し困っておられることと思います。
これに加え病床の削減や入院日数短縮の目的が、医療費抑制にあるのは皆様ご承知の通りです。
この流れの中で、患者様を病院から自宅や施設で看る、看取る方向に変わりつつあります。
通院困難や寝たきり、認知症で入院中の方や、終末期の方などが対象とされています。
実際年間死亡者数の8割以上は病院死で、自宅死はわずか12%で、国はこれを25%に増やすことを目標としています。
ただ経済的理由だけでなく、終末期の調査で自宅での最後を希望する方が6割を占めるのも事実です。
もちろん自宅や施設で療養したり、最後を看取るのは大変なことです。
これを24時間体制で医療面からサポートするのが在宅療養支援診療所の役割です。
個々の患者様についてケアマネジャー、訪問看護師、ホームヘルパー、施設との連携を取りながら診療していきます。
また実際問題として1人の医師が1年中24時間対応することは困難なことから、複数の医師がグループを組み、洩れのないよう体制を整えている例もあるようです。
それぞれの専門が違うと患者様のいろいろな変化に対応できるというメリットもみられるようです。
在宅医療についてお尋ねになりたい方は、一度近隣の在宅療養支援診療所にご相談に行かれるのも良いかと思われます。

第28回「肺炎ワクチンについて」

昨年から新型インフルエンザの流行が大きな問題ですが、例年冬場にインフルエンザが流行すると肺炎を併発して亡くなる方が増加します。
新型インフルエンザの流行はややピークを過ぎた感がありますが、季節性インフルエンザの流行はこれからで、肺炎はこれからが警戒期と言えるでしょう。
肺炎は様々な細菌、ウイルスなどで起こりますが、細菌性が重症化しやすく、そのうち肺炎球菌性が2/3を占めます。
やっかいな事に肺炎球菌はその5割近くが耐性菌となっており、抗生剤が効きにくい難治性となっています。
このため予防が大事となりますが、大変有効なワクチンがあります。
1回接種で5年間の有効期間があり、副作用もほとんどみられません。
従来は一生に1回と接種制限されていましたが、昨年の秋から、前回から5年以上間隔があると2回目接種も可能となりました。
せっかくの機会なのでできるだけ多くの高齢の方が接種されるようお勧めします。

在宅医療専門サイト
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